オイカワ/MOJO
えるものは見あたらない。バンガロー群は何故か〈クリスチャンキャンプ〉と呼ばれていた。
母親の実家がクリスチャンで、その老婆とも親交があったこともあり、私は、中高生時の夏休みにはそのバンガローに泊り込み、友人たちと数日を過ごすのが慣例であった。
あの辺りは一帯が高原になっていて、夏でも青空が広がることは滅多にない。しかしその日は珍しく朝から雲ひとつなく、対岸の原生林の向こうには富士山がくっきりとそびえていた。それでも湖の水温は低く、友人たちは水にはあまり浸からずに岸辺に打ち上げられた流木を集めて燃やした焚き火にあたってばかりいた。都会のもやしっ子どもめ。私は当時、水泳部に所属していたし、寒さ
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