尾崎喜八「山の絵本」を読む/渡邉建志
 
長く引っ張る。シャッ・シャッと音を立てて乳が走り出る。バケツからは温い乳色の霧が上がる。

美しい描写ですね。シャッ・シャッの中黒がすごい。最後のバケツのところは、なんともいえず、情景が目に浮かんできます。文はそのままこう続きます。

 もう直ぐ太陽が出る。大きな大きな蓼科の上の空が透明な水仙色になる。竜ガ峰のスカイラインに近く、空はわけても上気し、興奮し、何らかの奇蹟が今やまさに行われんとするかの気配を示している。

喜八さんも一緒に上気し興奮している感じがとてもいいですね。

以上、「たてしなの歌」より



「念場ガ原・野辺山ノ原」より

自然描写と
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