予知夢/MOJO
サラリーマンのようなこの男に、大きな魚がすぐそこにいることを告げる。しかし男はにやにや笑うばかりで、何でもないことじゃないか、とでも言いた気である。私は諦めて玄関を出た。魚に気づかれぬよう慎重に格子戸を閉める。
抜き足差し足で路地裏から大通りにでた。大通りを横ぎると、埋立地のように殺風景な原っぱが広がっていて、ススキや泡立ち草が生い茂る中に、外壁がくすんだ灰色の倉庫のような建物がぽつんと一棟だけ在る。中に入り、階段を最上階まで登ると、そこは何故か病室になっていて、私が常日ごろから死んでほしいと願う女がベッドに横たわっていた。 ベッドの脇の椅子に座り、私は女と言葉を交わす。釣師が海底に沈めた仕掛
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