予知夢/MOJO
 
仕掛けを探るように、慎重に言葉を選びながら、私は女を観察する。女の青くむくんだ顔を見て、この女はもうすぐ死ぬと確信する。私は嬉しくて堪らない。

 いつもより1時間早く目覚ましがなった。早番出勤のためである。
 ベッドの傍らに同棲している女が横たわっている。もぞもぞ動く毛布越しの輪郭が紡錘形の魚のようである。しかし私は最近この女に欲情しなくなってきている。少し前から女の体臭が気になり始め、それが兆候だったかもしれない。今では女のやることなすことが気に入らない。
 ベッドから降りた私はクローゼットからワイシャツをだして着けた。女はようやく目を覚まし寝ぼけた声で言った。
「起きれなくてごめんねぇ。朝ご飯はコンビニのおにぎりですませてちょうだい」
 さっきまでの夢を反芻していた私は、知らぬうちにネクタイの結び目を解いていた。端と端を持ち、だらりとUの字に弛ませたネクタイ。私はそのままの姿勢を保ち、ベッドへ近づいていった。
 そして……。

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