夜警/MOJO
仕事の話だった。
蕎麦を啜り、勘定を済ませ店を出ると、日はすっかり沈み、街は暗かった。歓楽街のネオンが歩道に反射し、私の影と交錯する。いつものことだが、駅のホームで電車を待つあいだ、ここに立っている者のなかで、唯一自分だけが孤立している、との思いに囚われる。
混雑した車両に乗りこみ、つり革に掴まる。車窓に流れる民家の灯りはいつも私の孤立感を募らせた。つい先日、カソリックを信仰する作家のエッセイを読み、不覚にも涙を滲ましてしまったことを思い出す。
明日は神経科の医者に通う日だ。処方された抗うつ剤が効くことに愕然としたのは、もう遠いむかしのことであるように思えた。あちこちの神経科で様々な薬
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