西域に消える/MOJO
 
るだけで、他には砂しかなく、陳さんが指差す遥か前方で巨大な岩山が陽炎にゆれている。
「三蔵法師がここを通ったとき、この辺り一帯は火の海でしたが、あの山から妖怪が降りてきて、大きな団扇で扇ぐと火は消えました」
 もっともらしいことを言うが、何かすこし違うぞ? 今回のお客はとりあえず物知りばかりなんだから、いいかげんなことを言ってもらっちゃ困るんだぜ。この人たちは学校の先生で、区役所職員や警察官と同様、添乗員を泣かせる人たちなんだから。  
 しかし、先生方は陳さんのヨタ話につっこみを入れることもなく、呆然と前方の岩山を仰ぎ見ている。本当はもうホテルに帰りたい、いや、日本に帰りたい、とさえ思って
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