組詩「二宮」/岡部淳太郎
 
る)歩行とともに、東海道線二宮駅の、銃弾の残る屋根の下を通り過ぎ、

――俺は常に下から二番目の男、だ。

という思いを乗せて、南口から北口まで、一足飛びに(二足飛びに?)、二本の弱った脚で跨いで、男は在る。歩いている。常に意味は二重だ。重なり合った瓦礫の下で、今日も時は朝と夜を跨ぎ越している。男と対になりそうな女たちが駅前のコンビニエンスストアの前に坐りこんでいるが、あれは吾妻ではあるまい。吾妻の山は小高い丘としてたったひとつ、片方だけの乳房のように視界の左手に聳えている。男は思い出を拭き取るように、右手で汚いものを拭く。祝われた、呪われた思い出、それらが、

――ますます俺の脚を弱
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