組詩「二宮」/岡部淳太郎
を弱らせるのか。
とつぶやいて、男はいまも在る。歩いている。時は常に背後、海のような背後にある。何もかもがだぶって見える。ここから先は既に、祝われた、呪われた、いずれにしても訪れてはならない禁忌の土地だ。
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揺れている
袖ヶ浦海岸に寄せる波が
揺れている
はるか太平洋の中心から
揺れて来る
この相模湾の小さな浜で
揺れている
ここにいるのは夏でさえも
ただ釣り人と暇つぶしの子供たち
揺れている
わが妻の振袖が流れ着いた浜で
揺れている
脚の弱った男は波打ち際に靴を揃えずに
潮風のために風邪を引く
揺
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