やきそばパンはいかにしてなくなり、夏はどのように始まったか/Monk
 

「どうだか」
「ねー」
「なに」
「『キミ』って呼ばれるのひそかに好きでしょ?」
「よくわからないな」
「なによ、その急に低い声は」
「ハードボイルド」
「ふーん」
「オレ、けっこうハードボイルドだと思うんだけど」
「そうでもないよ」
「そうかな」
「どっちかというと、」
「こっちに来なよ」
 
 
 時間が風力で動いていた
 ときに勢いよく、ときにゆったりと
 チサの腰にすっぽりと腕をまわしスカートに顔をうずめた
 耳元でバタバタと音がする
 いろいろなものが風力で動いているんだなと思った
 
 
「どうよ?」
「『どうよ?』って、」
「この格好
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