小詩篇 「砂浜」/芳賀梨花子
 

それでも歩く
思い出さえない
こんな穏やかな日が
今は一番好き


「8月」


情熱を失ってしまった
情熱という言葉は
死なないということだ
と遠い昔に聞いたような
これもまた
Deja`vu
情熱はやがてなにになるというのだろう
情熱はお前になにを与えたというのだろう
わかっていることは
テトラポットは破壊するだけ
ということ
なにも守ってはくれやしない
ということ
裸になって確かめるしか術はない


「9月」


海の音がする
からだの中から


「ふたたび7月」


地球が終わると信じていた
海の音が確信となった今で
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