小詩篇 「砂浜」/芳賀梨花子
 



「12月、南へ向かう」


接吻し続ける
激しく
悲しく
狂ったように
馬鹿げた愛をくりかえす
波打ち際の情熱に生きている
接吻するために
わたしは存在して
それ以外はわたしではなく
それには終わりがあるから
波は
よせてはかえらず
ただ砂を洗う


「1月」


何かを得て
何かを捨てるときにここにもどる

あるいは、なにもかもなくしたとき


「2月」


いつか

あなたが言った
いつか、と
いつも
その先がない


「3月」


強い風が吹く日には
目は不要
頬にあたるかすかな痛みが

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