春よ/m.qyi
架けてある三枚
の絵の画面はと言うと彼方の丘に延びる暗い岸辺が見え三人の髪を振り乱した白い
悪霊が叫び声の翳を引いて闇の中を走っていた。画中の外の風と中の風を縫いなが
ら喉笛を喰いちぎったゴースト達が駆け回るというモチーフの作品だった。
しばらくして天気も麗らかになりあの大きな絵が架かっているAホールを二度目に
訪れた時あの三匹の悪霊は捕らえられ魔術で骨も身体も薄く伸ばされ膠でカチカチ
に貼り漬けられ指一本も動かせず悲鳴はニスで画面にバラバラ塗り着けられて光っ
ていた。悪趣味な処罰として重い額縁の一点で吊るされホールの中央で微風にそよ
がれゆっく
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