*雨 恋し*/かおる
 





   三角州の 突端に しろく光る びいどろの お城
   空中庭園から眺める あおい キャンバスは
   いろんないろを 見せながら 
   まさに 黒に 沈もうとしている
   足下には チカチカ 瞬き始めた イルミネーションに
   賑やかな 命の 鼓動を 聞く
   振り仰げば 星ひとつない そらに
   雷さえも 恋しく想う





          あんなに うるさかった 蝉の声が
          どんな指揮者が タクトを振っているのか
          ピタッと 静寂の彼方へ 落ちていく
          くもが かげを
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