消失/岡部淳太郎
 
夜、
何かに笑わされている夜、
暴論でさえも正論であると、
ごまかして、ぢっと、目を瞑っている、
それらの新しい夜、
愛は売られ、
言葉は消え、
昔のままの兵法が独り歩きをしている。
慙愧に耐えない夜がつづき、
すげ替えられた観念が倒れずにある。
櫓の脚を縫うのはぞっとする。
九十九の確立で、人は失ってゆくだろう。
いまこそ愛を知れ。
消えゆく者のかたわらで、
言葉たちが吹く風に、
ぷるぷるとふるえている。


(消失 二)あさはかな

あさはかな
あかさたな
ひょっとして、息のせい?
ポールの先端が息を飲む。
ゴールの隅が息を吸う。
ぺしゃんこに
[次のページ]
戻る   Point(4)