大福餅秘話/大覚アキラ
屋の中には先ほどの紫色のサマーニットの男の他に、2人の男がいた。
上半身裸でソファに座っているスキンヘッドの小太り中年、そして窓際の応接セットに腰掛けて競馬新聞を呼んでいるスーツ姿の初老の男。僕を呼んだのは小太りスキンヘッドの方だった。彼は皿に山盛りになった大福餅を頬張り続けている。
「ちゃんとつなげて、ビデオ観れるようにしたってや」
小太りスキンヘッドの言葉に頷くと、ぼくはビデオデッキとテレビを接続することにひたすら専念した。すぐ後ろでは、紫サマーニットが電話で誰かに怒鳴り散らしている。どうやら借金の返済を催促しているようだ。「しばきまわす」「沈める」「埋める」「売り飛ばす」という
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