ありえざるもの/大覚アキラ
い呻き声が聞こえるとかいうことは全然なく、ただ単に動けないだけなんだけど。
だが、数年前に出張で広島のとあるホテルに泊まった時の金縛りは、ひと味違う恐ろしいものだった。
だいたい、その部屋は暗すぎた。切れかけの蛍光灯と申し訳程度のフットライト、カーテンを開けても見えるのは隣のビルの壁面だけ。ベッドの布団も何だか妙にじっとりと重く、とにかく“イヤな感じ”のする部屋だったんだよね。取材も終わり、夕食を済ませて、ホテルの部屋に戻ったのは夜の10時頃。翌朝が早い予定だったこともあり、シャワーを浴びてすぐにベッドに入った。
真夜中に突然目が覚めた。時間はわからなかったんだけれども、部
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