夏の肖像/
 
桜が冬を終えてふっくらと蕾をつけている。

都合いくらで実家が売れるのかを相談した後、
木下さんはおもむろに、自分の親について語った。

特に不自由はしないが、
花火を見ている時に、好きな子と手は繋がないかな。
そうやって美しいこの世界との距離を測る、と。

「神はいません」

店員さんがメニューを下げた。

誑かさないで、と小さく書かれた名札に、
紫陽花(あじさい、しようか、はいどらんじあ)が、
あるいは、源氏名のように思える。

ここは遊園地で、それに、廃園しているのに。

純粋な恐怖、と木下さんは続けた。

目に見えない神が病んでいく。なぜ病むのか、
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