夏の肖像/
 
か、
分かっているのに。
花火を見ている時に、好きな子と手を繋ぐ、
それが本当の夢ですか?

「ないです」。

「愛です」
一人で死ぬことがですか?

「珈琲が冷めるまでに、海沿いの植物園の話をしましょう。
できれば、甘いものも添えて」。

団地から歩いて5分の所に駅があって、
沸騰させたお湯に常温に戻した卵を溶く。
安売りの寝具で眠る生活の、ひもじさ、
貧しい人は品行方正で清く正しいのだ。

木下さんを研究対象として見る人の、
さも愛おしいと言わんばかりの、無害な笑顔を思う。

木下さんの親は、木下さんを人柱にした。
その悪夢ごと、木下さんは実家を売ろ
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