小説の習作 原稿用紙三頁 #10/田中教平
 
わからないものだから、苛々した。彼は書斎の机にぼうっとして、手元の本も、視線は本から外れている事が多かったから、本を読んでいる体(てい)をしていたかったのかも知れぬ、とカナは察した。
 ユウスケは朝風呂に入る事にした。ともかく陰気を紛らわしたかったから。時刻は八時半であった。ずっと、ずっと風呂に入っていてもいいような気がした。浴室に光が射しこんでくるのを、湯に浸りながら眺めていると、彼はこれも一つの現実逃避であると認めた。
 ユウスケが服を着て、一階、書斎にその身を戻すと、暖房が効いていた。妻のカナが自身の小説の推敲をしていた。カナは彼に、小説について色々な事を問いただした。ユウスケにとって答
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