ショート・カット/ホロウ・シカエルボク
アゲハ蝶が視界の端を過る、おい、二月だぜと思いながら目で追うと、それはただの燃えくずだった、どこかで誰かが何かを燃やしているのだ、廃棄書類とか、洋服とか…自分を裏切った恋人とか―ふと、さっき聞いた死んだシンガーの歌をきちんと聴きたいと思ってCDが買える店を探したけれど、そのあたりにはまるで見当たらなかった、ベンチがひとつだけ置かれた名ばかりの公園でデジタルデータを探して買った、震えながら聴くと昔思っていたよりずっとマシな音楽に思えた、子供の頃の方が音楽へ無駄なこだわりは強かった、だから気付けなかっただけなのだ、そこそこ歳を取ってよかったなと思うのはそんな瞬間だ、昔のアルバムだから四十分もすれば聴き
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