雪と心/杉原詠二(黒髪)
 

孤独な存在として死を前提としながら
生き抜きながらも
その中にある愛の構造が
雪のように静かに佇みながら
すべての人の存在をやさしく見守っている

あなたは考えたことがあるか
人を刺し殺すその手が
かつてその人の子を
抱いたことがあるということを

両面的存在である人間は
罵倒も愛も口に出せる
そしてその口を使って
人は息をせざるを得ない
この制限こそが
人間に与えられた恩寵
悲しみと喜びに心動かすのは
人類がずっと向き合って来た
善と悪の相克の中に生じる
確かな恩寵
静かに積もった雪のように
少しずつ確かめられていき
そしていつかは溶けて消えざる
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