メモ3(今のこと、音楽、人間のこと)/由比良 倖
 
あ」ひとつでは何も表せない。僕が「あ」と書いても、それが他人にとって持つ情報量はゼロに等しい。身振り手振りとか、声音とかをいろいろ駆使して「あ」と言えば、何かしらの表現にはなるだろうけれど、それは身振り手振りという言語の中のひとつの構成要素として「あ」を使っただけなのであって、別に「あ」そのものが何かを表した訳ではない。

現代では、日常言語ではない、何か特別な言葉の用法が、詩だと思われている気がする。「石ころ」という一単語が詩でも別に構わないと僕は思うのだけど、それだけではやっぱり詩とは見なされないし、僕だって「石ころ」だけで感動出来るほど原始的ではない。

言葉が特に面白いのは、言葉が
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