メモ3(今のこと、音楽、人間のこと)/由比良 倖
 
ツールだと思って。そう思うようになる前は、僕は言葉が大好きで、そこは感情に満ちた場所だと考えていた。すごく極端なことを言えば、例えば「あ」という一文字は、単なる日本語という構造体の最小単位のひとつでしかないけれど、同時にそこにはもう、感情が充満している。多分、原始人は多分「あ」としか言えなかっただろうと思う。けれど「あ」だけでは不便なので、いろいろ言葉を継ぎ足していって、今の複雑な言語が出来たと思うのだけど、複雑になった結果、さらに多くの、大きな感情が表せるようになった、とは思えない。多分「あ」しか知らない原始人が「あ」と言ったとき、そこには全ての感情が込められていたと思う。

現代では「あ」
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