竪琴と寓話、または水滴の状態/牛坂夏輝
 

近代化された
遠い山々

水墨画のスタイルで
描かれた僧侶たち

忘却とは
最も正確な
外套を着たイグアナの卵
の見る
幻覚の内部構造が
悲し気に
ミルクを求めて彷徨う
海岸線の奏でる
旋律である

それは寓話である

か弱いテーブルの名を呼ばず
名指されたことのない甘美な鉄線の美学が
こちらを見ている

その視線は黒い頭の朝のような物語を
幾度も書こうと試みる

水滴とは袋小路を進軍するラヴェンデルの香りに似た
まだ呪詛のような期待感を持った
寝台車の恋人たち
お互いに純粋な馬具をつけて
恐怖について
勉強する子供たちのような状態であ
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