表現の動機について/由比良 倖
起こることは、他者はおそらく僕と同時に生きていると感じ、僕の存在を生々しく感じるだろう、ということです。僕自身が古典文学を、生々しく、生きたものとして感じるから、というのが一つ目の理由です。いや、それ以上に、作者が生きている、とさえ感じます。あるいは九十年前に録音された音楽を聴くとき、僕はその音楽が九十年分古びている、とは全く感じません。やはり今生きている誰かと向かい合っている、あるいはそれ以上の生々しさを感じます。時間を超えて、静かに奏者と向かい合っているような。しかしそれは、実際のライブの高揚感ではなく、もっと深い場所で、孤独な場所で、僕と奏者の心の震えのようなものが一致しているような感覚です
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