すすき野原で見た狐の話/板谷みきょう
 
けることに成功しました。
その姿は、
月の光に透ける肌を持つ、たおやかな村の娘でした。

肩がそっと揺れ、伏せられた瞳、衣擦れの微かな音。

そして、胸元には、さりげなく紅色の簪が挿されていました。
狐が抱いた夢の証のように、清らかに光ります。
美しさと、すぐに消えてしまいそうな儚さが同時に息づくその姿。
男は立ち上がり、夜の静けさを破る一歩を我慢できずに踏み出したのです。

「…………。」

喉の奥から絞り出された小さな声。
化けられた歓びと消えないで欲しいという願いをまとい、
娘の姿をした狐の瞳に届きました。
狐はゆっくりと顔を上げました。
男に狐の秘密の化け
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