狐の願いと人魚の唄(To celebrate discharge)/板谷みきょう
す。
春の光が、やがて街道にそっと差し込みました。
母狐の犠牲の灯が与一をあたため、
人魚の瞳の蒼が胸に寄り添います。
届かなかった声も、伝えられなかった想いも、
やがて静かにやわらぎ、優しさへと姿を変えていきました。
ふと、与一は夜空を仰ぎ、心の奥で問いかけます。
「どうか幸せでいてくれますか」
その声は風に溶け、雪解けの水に乗り、
やがて遠い海の底へ届きました。
潮の満ち引きのひそかな気配とともに、
人魚の胸の奥に、やさしくふれていったのでした。
?. 蒼い道の果て永遠の光
与一の道は、ただひとつ。
母狐の灯を胸に、人魚の瞳の色を背負い、
与一
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