化石の物語/月乃 猫
{引用=
心を鞭打つ海風を欲する日
波音もきびしく鳴り
冬が眠りにつくまえに
海をめざす
息を荒げ 山の稜線を進みます
遠く人知れぬ
潮騒がむかえ
曇天の 色をうしなった
風も連れ立ち やってきた
お久し振りです
足跡さえない砂地は、
ユリの 海砂の白さ ひろがり 火山岩を
島のようにちりばめている
遠く あそこはすでに人の住む町
億年の旅の記憶
眼下に、水際に息絶えた
痛みの 一頭のクジラが亡骸を横たえ、
海の浸食地 切り立つ谷もまた海峡だったのです
温かな砂の感触をたしかめ、
傾
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