化石の物語/月乃 猫
傾いた蒼い空を 翼竜がとんでいく
それが、クジラの瞳がとらえた最後の光景
今も波の音は、止まずにいます
始終、逆なでる
永遠の波 単純な繰り返しを
砂浜に 眠る海獣の耳にひびき、
あなたは、化石におわる
年月の長さを その硬質の色にしるし
海だったのは
だれも信じることがない昔
隆起など 数えきれない時のおかげで、
時は、いつも
生あるものの命を 値踏みしては、
選択に 知らぬ間に決められた
終焉の名札を付ける、
誰もが避けられないのです
あの時の古代魚たちの群れの鱗の光か、
クジラたちのわらい声か、
それは、青い天蓋にひろがり、
さっき私の横をとおり過ぎて行きました
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