沼の守り火(河童三郎の物語)/板谷みきょう
「三郎が……龍神様に願いに行ったって話じゃねぇか。あの子は必ず、村を護ってくれるべ
囁きは交錯し、不安とかすかな救いが混ざり合った、そのとき―――
ドッカーン! ガラガラガラガラーッ!
山を裂く雷鳴が轟き、地を震わせた。村人たちは、あまりの恐怖に顔を覆うた。
その雷鳴の後に、太く低い声が山々を揺るがして落ちてきたんでございます。
「河童三郎の命と引き換えに、この地を護ろう。今日より、ぬらくら川は二度と氾濫させぬ」
村人は震え、龍神の声だと悟り、一斉に額を地に押しつけて祈った。「なむ、なむ、なむ……」
厚い雲は裂け、夕暮れの空に、濡れた一つ星がぽつりと灯った
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