沼の守り火(河童三郎の物語)/板谷みきょう
 
ったとさ。それは、まるで三郎の小さな瞳のようであったかもしれぬ。

「ありゃあ……三郎だ。沼を護った三郎が、星になったんだべな。村を救う、尊い神さまに……」

爺と婆は、長年の苦難が溶けるように涙を浮かべ、何度も静かに手を合わせた。三郎は「村を救った尊い神」として、人々の都合の良い希望と信仰の中に、永遠の存在となったのでございます。

陸. 三郎の本当のこと
―――だが、その頃。

人々が“星になった神さま”と信じて拝む三郎の体は、誰も知らぬ奥山の湿地で、静かに、確実に、冷たくなっていたのさ。

龍神に命を捧げたあと、三郎の亡骸は、誰にも看取られることなく、雨に打たれ、泥にま
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