沼の守り火(河童三郎の物語)/板谷みきょう
にまみれ、横たわっていた。
肉はゆっくりと形を失い、腐乱が始まっていき、その身からは、夜風に溶けるような哀しい悪臭が立ち上り、湿った土を静かに犯していった。
美しいと信じられた犠牲の裏にあるのは、目を背けたいほどの孤独な真実であった。三郎はただ、自分の沼を守りたかっただけ。その純粋な願いは、村人には「神の救い」として、温かく、美しく語り継がれてゆく。
しかし、三郎の本当の姿を知るのは、湿った山の土と、滲んだ水だけだったのでございます。
漆. 守り火の永遠
今も、村のどこかの囲炉裏の小さな炎は、村の生活を暖め、人々を安堵させる一方で、河童三郎の哀しき一生を、誰にも知られぬま
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