沼の守り火（河童三郎の物語）/板谷みきょう
神は、しばらく沈黙した。谷を満たすのは、滝の轟音と、三郎の小さな心臓の鼓動だけであった。
「分かった。河童よ。その孤独な決意、見届けた。だが、その命は、もはや元の場所には還らぬ。お前が捧げた命の対価として、この地を護ろう。」
三郎は、龍神の言葉の重さに、ただ身を小さくして、深く頭を下げた。彼の目には、二度と見ることのない、沼の暗い水が映っていたかもしれぬ。
伍. 星の下の祈り
その年の夏、空は昼も夜もわからぬほど黒く、雨は大地を叩き続けていた。
村人たちは集会所に集まり、肩を寄せ、息をひそめた。誰もが三郎が戻らぬことに不安を覚えつつも、希望を捨てきれずにいた。
「三
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