たもつ『父の献立』鑑賞 /室町 礼
に関われないし文学に関わって
はいけない人なのである。
株屋かヤクザか浮浪者かそういった非文学的な
お仕事が向いている。ところが存在が文学的な
ので、なぜか足向きが文学のほうへ向かってし
まうのだ。これはわたしにとって悲劇である。
かかわられる詩歌人にとっては迷惑極まりない
だろう。
天国の門をくぐろうとして地獄の門をくぐって
しまうと書いたのは坂口安吾だったかしらない
が冗談じゃないのだ。
ほんとに冗談じゃない。
外部世界の半分以上が欠落しているというこの
世界認識のガタピシゆえに
人さまの詩歌を読むときも言葉の音楽性、ドラ
マ性に傾いた読み方しかできなかった。
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