見えているのなら難しくない/ホロウ・シカエルボク
 
峙しているかのような錯覚を覚える、手段の少ないあの頃には間違いなく抜殻で居る時間の方が長かった、それは間違いない、今よりも確かに身近に死を感じていたような気がする、生きながら死んでいたのだ、リビングデッドというやつだ、ただひとつ、演劇をやっている時だけが無性に楽しかった、その時だけ自分は生きているのだと感じることが出来た、舞台に立つことに夢中になっていた、でもそんな瞬間を感じれば感じるほど、日常は苦痛になっていった、阿呆の真似をしているうちに本物の阿呆になってしまうのではないかというような居心地の悪さをずっと感じていた、その頃には理解していた、俺はあらかじめ定められたものに従って生きるのが苦手な人
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