今はむかし/由比良 倖
 
こと、覚えてますか?)、
海にはオカリナの萌芽、それが落ち行く先の海、櫛やトマトや細胞や季節がプランクトンに分解されながら泡っぽい粉になり、海底に全ては沈み、白い広い花畑となって、表情なんてもう笑みか微笑みか、無表情しか無い、そんな始まりの世界が、もうひとつの私設の宇宙みたいな、花っぽい揺れの世界が、世界その1が、その2が、ゼロの世界が、今どこにだってあって、私は落ち行く先々で、骨から生えて血の染みた弦をギターに張って、世界を抱きしめながら生き、死に、泣き、笑い、を同時に浮かべて、同時に、花の故郷が私をあっさり殺すまで、沈みたいです。

心の花を見ていてください。天気も記憶も感情も、届かない
[次のページ]
戻る   Point(3)