全行引用による自伝詩。 02/田中宏輔2
いった物や、箱や、什器(じゆうき)のことを考える。われわれが時間の行(こう)業(ぎよう)を理解していると思うことの虚しさ。時間はその死者たちを埋葬して、その鍵を手許から離しはしない。ただ夢の中でのみ、詩の中でのみ、遊戯の中でのみ──?燭を点し、それをかざして廊下を歩くならば──われわれは、はたしてわれわれであるのかどうかもわからないこのわれわれの存在よりも以前にわれわれであった存在を、ときとして垣間見るのである。
(コルターサル『石蹴り遊び』その他もろもろの側から・105、土岐恒二訳)
わたしたちは知ることのなんと少ないことか──迫り来る寒さにしても、奇蹟や死、まして細長い浜
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