全行引用による自伝詩。 02/田中宏輔2
 
い浜辺や、丘や、木や石のわずかの壁と、小さな火、わたしたちを暖めてくれる明日の太陽や、明日の平和への願い、良い天気への願い……この嵐で明日なんて吹っとんでしまったとしたら、どうなるんだろう。もし時間というものが静止してしまったら? それに昨日というものも、もしわたしたちがそういう嵐に道を失ってしまったら、もう一度その昨日を迎えるかもしれない。そこでわたしたちはその昨日を明日の朝日と思いこむかもしれない。
(ロバート・ネイサン『ジェニーの肖像』6、井上一夫訳)

 彼はほとんど無一物で暮らしていたし、彼が一年に一枚の絵も売れたかどうか危ういものである。しかし、彼は自分の才能を疑ったことのない、
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