全行引用による自伝詩。 02/田中宏輔2
な恐怖はすべて流れ去り、彼女の力のなくなった手は、静かにヘンリーの手に握りしめられ、臨終の言葉に、ひそかな音のリズムを見いだして、それを楽しんでいるかのようだった。
(ファニー・ハースト『アン・エリザベスの死』龍口直太郎訳)
(…)彼はこの皮肉っぽい軽い詩のように、いとも簡単に詩が浮かんだ頃のことを思い返した。今は詩作もずっと知的で計算された言葉の選択と配列になっている。自分の生活の中で内側から自然に湧き上がるものが、はたしてあるだろうか。
(P・D・ジェイムズ『神学校の死』第二部・19、青木久恵訳)
サディーはとても優しい子でした。詩は情熱だけれど、人生のすべてである必要はない
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