全行引用による自伝詩。 02/田中宏輔2
ように、地雷を埋めた浜辺だった。
(ガデンヌ『スヘヴェニンゲンの浜辺』23、菅野昭正訳)
(…)今(なんて言葉だろう、今なんてものはありはしない)、ぼくは河に面した手すりに腰をかけ、赤と黒のツートンカラーの遊覧船が通るのを眺めている。写真を撮る気になれない。ただあわただしく行き交う事物を眺めながら、腰をかけたままじっと時の流れに身をまかせている。風はもうおさまっていた。
(コルタサル『悪魔の涎』木村榮一訳)
(…)家は、決められた時間に食事をとるしっかりした家庭で、うす暗い客間があり、ドアの脇にはマホガニーの傘立てが置いてある。壁にはロマン派の風景画がかかっているにちがいない。家で
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