全行引用による自伝詩。 02/田中宏輔2
 
単純な箇所でしょうね」と彼女は言った、「毎日の言葉が使われている箇所ね」
(ガデンヌ『スヘヴェニンゲンの浜辺』17、菅野昭正訳)

(…)そして、おそらく、その景色があれほど美しくなかったら……とはいうものの、ただひとつの状況を異なるものとして想像することなどできるだろうか?……人生には、まるで芸術の傑作のように整えられている瞬間が、またそういう全生涯があるものなのだ、と彼には思われた。あれは彼らにとって目眩(めくるめ)く驚異だった。六月のこよなく美しく晴れた日のことで、(…)
(ガデンヌ『スヘヴェニンゲンの浜辺』21、菅野昭正訳)

スヘヴェニンゲンの浜辺も、他の浜辺と同じよう
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