全行引用による自伝詩。 02/田中宏輔2
の空虚を巧みに満たしてくれたが、そもそも魂のなかに欠けていたものは何だったのだろうか。
(J・G・バラード『静かな生活』木原善彦訳)
しかし、詩人というものは、みんなきちがいではないですか?
(ジャック・ヴァンス『愛の宮殿』8、浅倉久志訳)
詩人の神経は伝導性があり、抑えきれないほどのエネルギーの奔流を運びます。彼は不安です──どれほど不安なことか! 彼は時の動きを感じます。指のあいだには、まるで生きた動脈をつかんだように、暖かいパルスが伝わってくる。ある一つの音で──遠くの笑い声、小さな波紋、一陣の風で──彼は気分が悪くなり、失神します。なぜなら、時の果てまでかかっても、その音
[次のページ]
戻る 編 削 Point(11)