全行引用による自伝詩 02/田中宏輔2
 
昼なんだ」とジョニーは両手で顔を覆って呟く。「おれは思いきって、パンに触ると、二つに切って口に放り込む。何も起こらないと分かっているが、それが恐ろしいんだ。何も起こらないから恐ろしい、分かるかい? お前はパンを切り、ナイフを突き立てるが、何もかも元のままだ。おれには分からないんだ。ブルーノ」
(コルタサル『追い求める男』木村榮一訳)

 それは彼を精神的に支えていると気づくが、操りもし、傷つけてもいる……そうしているのが彼自身でもあり、彼以外のものでもある。
(イアン・ワトスン『ヨナ・キット』3、飯田隆昭訳)

 クレールがそばにいると秋がいつもとちがって見えるんだ、とあなたは書いてき
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