全行引用による自伝詩 02/田中宏輔2
はたいてい、手に手を取って進むものなの」
(ミネット・ウォルターズ『女彫刻家』4、成川裕子訳)
ルイーズが言う。「とにかく、この前より楽よ。ドッグフードしか食べなかった頃のことを思えば」
アンナが言う。「前に犬だったとき──」
ルイーズは自己嫌悪を憶えながらも、口を挟む。「あなたが犬だったときなんて、絶対に、ないのよ」
アンナが言い返す。「どうしてわかるのよ?」
ルイーズが言う。「あなたが生まれたとき、私はその場にいたの。あなたのママが妊娠していたときだってよ。あなたがこのくらいだった頃から私は知ってるんだから」彼女は給使長がしたように二本の指を近づけた。ただし、指にはし
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