全行引用による自伝詩 02/田中宏輔2
 
フ『ダロウェイ夫人』丹治 愛訳)

 彼の黄色味をおびた猫のような目はほんの少しだけ開いていて、本当の猫の目みたいに、揺れ動く枝や過ぎ行く雲を映してはいても、その奥にどんな考えや感情が宿っているかを示すことはなかった。
(ヴァージニア・ウルフ『灯台へ』第一部・1、御輿哲也訳)

結局、人は自分の本当の気持ちを言葉にすることなどできないのだろう。
(ヴァージニア・ウルフ『灯台へ』第一部・4、御輿哲也訳)

「ママ、パパに何があったの?」
「パパは詩人だったのよ」
「詩人ってなんなの、ママ?」
「パパもわからないっていってたわ。さあ、手を洗って、夕ご飯にしましょう」
「わからな
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