全行引用による自伝詩 02/田中宏輔2
ノーの現実感覚はお粗末なものであるということです。彼はさまざまの出来事の原因を捉えることができず、他者のまなざしの背後に隠されているものを決して知ることはないでしょう。しかし外部世界は、それがどんなに隠されたもの、再認できないもの、非因果的なものであっても、無言のものではない。それは彼に語りかけます。ボードレールの有名な詩、「長い反響(こだま)が……混りあい」、「香と色と音とがたがいに応えあう」あの詩におけるように、外部世界においては、ひとつのものは別のものに近づき、別のものと混りあい(エリーザベトは聖処女に混りあいます)、かくして、この接近によってひとつのものは理解されるのです。
(ミラン・ク
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