それはまるで毛布のなかの両の手みたいで/中田満帆
いつをチェイサーに、安いバーボンを呑みはじめた。
残念ながら、――とぼくはいった。
おまえのことはおもいだせないんだ。たぶん、おもいだしたとたん、ぶん殴ってるだろうけどな。
できるわけないやんけ、おまえにひとは殴れへん。
おれは1年まえ、親父を殴った、他人だっておなじことだ。
家族との仲もわるいんやな。
家族との仲が、だ。
そやけどおまえ、おれたちのだれともつきあいはあらへんやんか?
それが友だちにいう科白なのか?
友だちねえ、あれは巻き餌みたいなもんや。
おまえに友だちはおらへんて。
ぼくは黙り込んだ。いったい、なに
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