それはまるで毛布のなかの両の手みたいで/中田満帆
 
を求めてる。でもなにかを得るにはまずは冷や水に頭から突っ込んで、自己認識ってやつを重層化する必要があるみたいにおもわれた。あるいは脳味噌にシラタキをぶち込む必要があった。
 つまるところ、やつはまともじゃなかった。わるい色が一色、その心を占領しちまってるにちがいなかったんだ。やつはぼくのそばまで来て、もぞもぞしたうごきを何度か繰り返した。ぼくにつよい蔑みをむける。そしていった。
   呑ませて欲しいんや。
  ふざけるな。
   おまえ、おれのこと知っとうやろ?
  いいや、おまえなんか知らない。
   小学校でも、中学でも一緒やったろ?──おまえ、太ったな。
  いいや、おまえなん
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