それはまるで毛布のなかの両の手みたいで/中田満帆
い笑みを、冷たい、無表情に変えて持ち場にもどった。気分がわるい。むかむかしてた。気づくと、品番のちがう商品をパレットに積みあげてしまってた。けっきょく仕事は7時までつづき、ぼくはせっせとトラック別にわけたパレットを階下のホームへ持ってった。運転手たちにパレットを渡し、また2階へあがる。ふとかの女を見た。つらそうなふたつの眼がみじかい髪のなかで一瞬光る。ようやく仕事が終われば、ぼくはかの女に挨拶をするために駐輪場で待った。そして叶えてから、酒を買いにいった。バーボンをいっぽん。ひとくち味見してると、男が寄ってきた。若い男だ。ぼくとそうかわらない。背広を着てる。その口元はだらしなくひくつき、なにかを求
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