それはまるで毛布のなかの両の手みたいで/中田満帆
 
って灯りの乏しい田舎道を歩いた。中古車ディーラーが点々としてる。あとはスタンドぐらい。車がぼくを、ぼくの人生を、そしてぼくの死をも追い越していく。まるで馬みたいに。雲がかぜに流され、それまで見えなかった月が姿を現した。まさしく、グレープフルーツ・ムーンだ。その光りのなかに一瞬立ち止まり、交差点を進む。ひとかげが浮かぶ。なにかがぶつかる音がしてる。中学生らしい少年たちが車道にむかってオレンジを投げつづけているのを見つけた。オレンジは道で弾け、あるいは轢かれて爆発し、果肉と汁を撒き散らした。
  なにやってるの?
   これ、黴が生えちゃったんだよ。
 ダウン・パーカーを来た少年がいじわるそうな
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